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地球周回軌道上での充放電に世界で初めて成功

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株式会社アイ・エレクトロライトと関西大学の石川正司教授 (弊社代表取締役CEO) は、2014年620日に打ち上げられた人工衛星「ほどよし3号」に搭載され、現在、地球周回軌道上にあるイオン液体リチウムイオン電池の軌道上での充放電に世界で初めて成功しました。

~経緯~

620日の「ほどよし3号機」の打ち上げ後、85日に衛星に搭載されているイオン液体電池の軌道上の充放電 (短時間) に世界で初めて成功し、1027日に長時間の充放電試験にも成功しました。

得られたデータから、長期の宇宙滞在にもかかわらず宇宙環境の影響による劣化がほとんどないことが明らかになりました。この二次電池は、蒸気圧がほとんどないイオン液体を電解液としているため、柔軟で薄いアルミのラミネート外装のみで宇宙用蓄電池とすることに成功しています。これにより、従来の宇宙用電池で必要であった、堅牢な耐真空外装や樹脂モールドを一切必要とせず、軽量で薄く、コンパクトな電池となっています。現在、軌道上の滞在約6か月を順調に迎えており、宇宙・航空などの極限環境でも安全で信頼性の高い蓄電池として、適用が進むことが期待されています。

~得られた主な成果と今後の展望~

衛星上での運用試験の結果は、本年11月の宇宙科学技術連合講演会、ならびに電池討論会で詳細を公表しました。本電池は、容量約1 Ah、最大電圧4.2 Vの薄型電池であり、人工衛星のような限られた空間でも必要な場所に必要数搭載できる、コンパクトな蓄電池として設計しました。キーとなる材料として、石川教授らが開発したFSI系イオン液体と呼ばれる無溶媒の電解液を使用しています。これは高出力のリチウムイオン電池の電解液として使用できる、事実上唯一のイオン液体であり、難燃性で蒸気圧をほとんど持たないことから、簡素なアルミラミネート外装のみで宇宙用の薄型電池を実現しています。

 

重要な成果は、この蓄電池は柔軟な外装のみで宇宙空間に安定に存在でき、比較として地上に温存した同型の電池と全く変わらない性能を示したことです。打ち上げ前の地上試験において、宇宙空間を模擬した超真空試験をパスし、5年超相当の宇宙放射線量の照射試験にも全く劣化を示さなかったことから、関係者は宇宙での好結果を予想していました。しかしながら、電池制作から打上げまでに9か月が経過し、その間にも打上げ地(ロシア)までの輸送、ロケット打ち上げ時の高Gと高振動を受け、さらに宇宙空間で5か月もの期間を過ごしています。このような過酷な条件にも拘わらず、本開発のラミネート薄型電池では、地上と同じ経時変化以外の劣化が全くないことが実証できた意義は、非常に大きいと受け止めています。

衛星用イオン液体リチウム二次電池の今後の評価および研究開発は、当社および関西大学の共同研究として進めます。本電池を端緒とし、安全、高信頼性の宇宙・航空用など、極限環境で用いる新世代蓄電池として発展することを期待しております

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